カール・ラガーフェルドの生き方
大変な愛書家であったものの、不思議なことに自伝を記すことはついに一度もなかった。本人は、「誰かの過去について書くなんて、未来を失い始めた証拠さ」と皮肉っていた。
カール少年は、スケッチと読書、それに雑誌の切り抜きなどが好きだった。
生き方やキャラクターが確立されている一方で、本人も「雇われの殺し屋みたいなもの」と表現する通り、自身のブランド設立に関してはあまり頓着していなかった。実際、「カール・ラガーフェルド」ブランドは数十年の間に5度も売買されることとなり、長いこと赤字を計上していた。
デジタルの世界にもすぐ馴染んだラガーフェルドは、それでもどこか18世紀風の佇まいがある人物だった。彼が何より好んだ素材はシルクでもシフォンでもなく、紙だ。
徹底してワーカホリックだった彼は、サントロペのバカンスに出かけても海辺でスケッチをしていた。
フランス文化、デザイン、インテリアなど非常に広大な知識を持ち、芸術に関する造詣や4ヵ国語を流ちょうに話す能力はいつもエディターたちを驚かせた。いつも様々な言語で切れ味の鋭い言葉が飛び出す。
晩年の一番の友人は、愛猫のシュペットだった。
最近のコレクションの多くはiPadでスケッチされたものだが、やはり一番のお気に入りはペンと紙だ。ただし、カールの流儀では、ペンの代わりに「シュウウエムラ」のアイライナーを使う。
非常に気前が良く、ことあるごとに贈り物とグリーティングメッセージを友人やエディターに送っていた。
アルコールも煙草もドラッグも嗜まない。